井上弘美句集『夜須礼』
自選十五句
野遊びの靴脱ぐかへらざるごとく 荒縄をくぐる荒縄鉾組めり 流氷原を行くたましひの青むまで 蝮酒ぐらりと闇が傾ぎけり 犬岩の耳滅びゆく冬銀河 すこやかに大地濡れゆく杏の実 ひるがへるとき金色の鰭涼し 金星の神在月の高さかな 蕪村忌の舟屋は雪をいただけり 狐火を見にゆく足袋をあたらしく 湖一壺冬満月のあかるさに 幾重にも折山のあり懸想文 空遠くなる熊啄木鳥のドラミング 水瓶に花鳥尽くせる霜夜かな 楮踏むとは産土の水を踏む
自選十五句
野遊びの靴脱ぐかへらざるごとく 荒縄をくぐる荒縄鉾組めり 流氷原を行くたましひの青むまで 蝮酒ぐらりと闇が傾ぎけり 犬岩の耳滅びゆく冬銀河 すこやかに大地濡れゆく杏の実 ひるがへるとき金色の鰭涼し 金星の神在月の高さかな 蕪村忌の舟屋は雪をいただけり 狐火を見にゆく足袋をあたらしく 湖一壺冬満月のあかるさに 幾重にも折山のあり懸想文 空遠くなる熊啄木鳥のドラミング 水瓶に花鳥尽くせる霜夜かな 楮踏むとは産土の水を踏む