平手ふじえ句集『山籟』

自選十二句

風の音高嶺に集め木花咲く
宿帳にしかと普羅の名青胡桃
野火放つ啐啄の風待ちにけり
つばくろを出迎へてゐる核家族
冬近し滝の骨格見えて来し
石組みの一景にして夏旺ん
白鳥来あまつくもゐの匂ひして
野のものを干して山廬の冬灯
窯出しの鶴頸や春遠からず
蛇苺山籟ひたと止むところ
鳴き砂をしたたか鳴かせ銀河濃し
佐渡見ゆる越の砂子路立秋忌

(2022年8月8日角川書店刊、定価2,700税別)