藤本美和子抽出
三月
白味噌を極上とせりお正月 井上弘美
セーターに首を通せば山見えて 菅家瑞正
ウオーキングマシンに乗つて松の内 長沼利恵子
繊月は雲よせつけず明きの方 陽美保子
(三月集)
あらたまの年のはじめの白湯のいろ 小橋信子
色紙の裁たれて匂ふ冬至かな 伊藤麻美
病室に冬至の柚子を置きにけり 小山草史
福相の人と逢ひたる避寒宿 神戸サト
(石泉集)
臼起し寸胴鍋に水張つて 取違憲明
走れ走れ正月の凧輝かせ 佐藤順子
虎落笛はめ殺し窓ばかりなり 小宮由美子
一月一日鷗のこゑを聞きに来し 板本敦子
あの椅子とこのセーターと母のこと 川岸雅子
風音か獣の音か餅焦がす 星井千恵子
乃木坂や破魔矢の音を先立てて 水上緑子
祖谷渓の夜の風あらき葛湯かな 石井タミ子
獅子舞の歯の当りたる我が頭 遠藤久江
抽出しに用なき鍵や年の暮 望月志津子
九絵食べにゆく初旅に加はりぬ 大西紀久子
万両忌昼餉のそばをすすりけり 長村光英
(泉集)