藤本美和子抽出
十二月
葛の花アルファ米に湯をそそぎ 長沼利恵子
(十二月集)
先頭が止まれば止まる新松子 植竹春子
山葡萄つまめば昼の月失せて 小橋信子
逆光の鳥ばかりゆく鳥威 伊藤麻美
退院の妻と松茸ご飯かな 小山草史
(石泉集)
棟札の墨痕も秋闌けにけり 平手ふじえ
秋の蚊を払へば山の濃くなりぬ 星井千恵子
社より神木古し豊の秋 取違憲明
敬老の日や浮雲に手を伸ばす 永岡美砂子
墓石に水のまぶしき残暑かな 長村光英
蛇笏忌の触れて真赭の芒かな 石井タミ子
岩石に石目のありて秋の風 木本隆行
隼の巣穴の空や秋気満つ 志田礼子
享年は百と八歳吾亦紅 望月志津子
ダンスありフルートのあり敬老日 松田ナツ
秋霜や寅を指したる船磁石 川岸雅子
警笛に散り急ぎたる百日紅 小宮由美子
栗飯の香や新しき電気釜 三浦れい子
富士川に立つ白波や蛇笏の忌 三上かね子
月白や塒を出づる萱鼠 高砂浩
(泉集)