三月

凍星  井上弘美
西郷逗留の隠れ湯風凍つる
波頭冴ゆ逆光の篤姫像
古代隼人集落遺構寒茜
枯芝を踏むや縄文一号屋
凍星や地に開聞岳の火山灰

冬草  菅家瑞正
コンサートホールにて年惜しみけり
縁側に置かるる冬至南瓜かな
冬草を撫でたる後の湿りかな
プラタナス落葉の嵩の城下かな
冬耕といふほどもなき鍬使ひ

春北風  秋山てつ子
金柑のほとりにて声かけらるる
煤逃の小町通りの二階かな
三日早や虚虚実実に暮れしこと
笹子鳴く二階堂とは草つ原
春北風の赤子の息がかかりけり

はなびらもち  長沼利恵子
遠くまで岬の晴れて鷹浮いて
黒松は防風林や初鴉
十七はめでたき素数竜の玉
初松籟はなびらもちをひらきけり
獅子舞に白髪頭をかませたる

初風  陽美保子
葛湯溶き一日はるかとなりにけり
一陽来復羽二重餅の一包み
雪嶺か雲かと見やる番茶かな
日めくりのかくも分厚き初寝覚
初風や遊びゐる子に呼ばれつつ