一月   波郷忌       

波郷忌の大きな柚子を賜りぬ
おほわたのひとつ寄りくる手が熱し
おほかたは枯れ尽したる水の上
紅葉散る隠沼てふはこのあたり
水鳥の羽ばたく音も闇の奥
山桑の木や潔き枯れの音
大根の穴と青首大根と
城跡の端に見えたる焚火の火
寒潮を見てきしといふ顔そろふ
沖に鮫安楽椅子がきしみけり

二月  富士   

防人の峠つつじの返り花
親潮と黒潮のあふ年用意
極月のてのひらにおく稚貝かな
北溟の波の白さよ尾白鷲
結局はポインセチアを買はぬまま
一陽来復草の穂絮がかくも飛ぶ
富士みゆる小径に出づる冬木立
前方に川をのぞめる初神楽
一管の笛の音に乗る初雀
手庇に富士引き寄する四日かな