2025年

一月

かはせみの突つ込む水も初景色

 「かはせみ」は歳時記では夏の分類になっているが季節を問わずよく見かける。
 近所の片倉城址公園の傍をながれる湯殿川のほとりを歩いていると必ず見かける。この句もまたそうだ。鴉や雀は初鴉、初雀として新年の季語に立項されているが「かはせみ」はない。それでも「翡翠」とも書き、コバルトブルーとも呼ばれるあの翼の色は瑞兆の色といってもいい。獲物を見つけたときの敏捷性のある動きもまた正月にはふさわしくめでたい。作者としては中七の「水も」の助詞「も」に祝意をこめたつもりである。
 ずうっと以前、大木あまりさんが私の作句姿勢を「かわせみ」に譬えて下さったことがある。そうして「水辺の狩人、カワセミの美和子」とまで言って下さったのである。水辺が好きで「かはせみ」に出会うとちょっと得をした気分になるわたくしには嬉しい言葉でもあった。そんなことを思い出す句である。 2013年作。『冬泉』所収。