藤本美和子主宰の俳句
十一月

馬手弓手  

薬草の香のひとしほや野分後
たれかれに叩かれてゐる種瓢
一夜経ていよよ呆けし柿のいろ
南天の実の粗々と朝の地震
鶺鴒にしたがふ遊び心かな
蒸籠の湯気噴いてゐる秋彼岸
馬手よりも弓手親しき零余子かな
胡桃割る中央線を見下ろして
山国に弦月あふぐご命日
野の草のいろのともしき十三夜




美和子句 自解
 

十一月

亀は浮き鯉は沈みて七五三   

 「ウエップ俳句通信」連載の超結社句会「新12番勝負」に出した句である。句会場は新宿御苑にある「ウエップ俳句通信」会議室。ホスト役を星野高士さんと私が務めている。私達二人がホスト役についたのは二〇一〇年三月(VOL・55号)なので、十三年目に突入したところである。毎回ゲストを四名迎え、総勢六名で句会をする。超結社なのでそれぞれ句風の違う作品と出会えるのが楽しみである。句会の後の二次会は酒席ということもあって談論風発、また一段と盛り上がる。掲出句について、この日ゲストにお迎えした行方克巳さんが「七五三」とは全く関係のない世界を描いて俳諧味がある、なかなかできない句だと言って褒めて下さった。句会の途次に立ち寄った高幡不動尊での嘱目の景である。平日にも関わらず七五三詣の親子の姿がちらほらと見えた。だが私には池の鯉や亀の動きの方に関心があった。七五三詣の姿はいかように詠んでも詠みつくされているように思えたからだ。一句として通じるかどうか、心もとない思いで出句しただけに行方さんの言葉は心底有難かった。そしてやはり現場に立って得た句の強さを思ったのだった。 二〇一五年作。『冬泉』所収。
 


藤本美和子プロフィール
1950年、和歌山県生まれ。
綾部仁喜に師事。2014年「泉」を継承し主宰。
公益社団法人俳人協会理事、日本文藝家協会会員。句集に『跣足』(第23回俳人協会新人賞)、『天空』、『藤本美和子句集』、『冬泉』(第9回星野立子賞)、著作に『綾部仁喜の百句』、共著に『俳句ハンドブック』等。